忘らるる身はうらぶれぬ唐衣
きてもたちにし名こそ惜しけれ
- 歌の意味
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忘れられた身はしおれてしまった。唐衣を着ても裁つように、通ってきても立ってしまった浮き名こそが惜しい。
- 鑑賞
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恋歌 542
詞書「人々歌よみしに寄衣恋」
恋人に忘れられた自分はすっかりしおれてしまったが、それよりも、通ってきたことで立ってしまった浮き名こそが惜しいと詠んだ歌である。唐衣の縁語を巧みに用いている。人々が歌を詠んだ折に衣に寄せる恋の題で詠んだ一首である。
この歌は『続後撰和歌集』に入集している。類従本では題を「衣によする恋」とする。底本の注記によれば、類従本、定家所伝本、『続後撰和歌集』では四句を「さても立ちにし」とする。
初句「忘らるる」は、忘れられるの意である。
二句「身はうらぶれぬ」は、身はしおれてしまったの意で、本巻の第四百二十首の「うらぶれ」と同じ語である。ここで句切れとなる。
三句「唐衣」は、唐風の衣の意で、「着」「裁ち」の縁語を導く。
四句「きてもたちにし」は、着ると来る、裁つと立つとをそれぞれ掛け、通ってきても浮き名が立ってしまったの意となる。
結句「名こそ惜しけれ」の「こそ」は係助詞で、「惜しけれ」と已然形で結ぶ。本巻の第五百二十三首の「名のみたつらむ」と同じく、立った浮き名を嘆いている。
うらぶる:心がしおれて悲しむ
きる:衣を着る意と、来る意を掛ける
たつ:衣を裁つ意と、名が立つ意を掛ける
- 作者
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源実朝
- 出典
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金槐和歌集
- 前の歌
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逢ふ事のなき名をたつの市による かねて物思ふ我が身なりけり
- 次の歌
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津の国のこやの丸屋の葦簾 間遠になりぬ行き合はずして