- 歌の意味
- 別れた昔は露のように消えてしまったのか。浅茅原の、人の跡もない野辺に、秋風が吹いている。
- 鑑賞
-
恋歌 544
詞書「寄物語恋」
別れた昔のことは露のように消えてしまったのか、今は人の跡もない浅茅原の野辺に秋風が吹くばかりだと詠んだ歌である。物語に寄せる恋の題で、物語の場面を思わせる荒涼とした景を描いている。
初句「別れにし」は、別れてしまったの意である。
二句「昔は露か」の「か」は疑問で、昔は露のように消えたのかの意となる。ここで句切れとなる。
三句「あさぢ原」は、丈の低い茅の生えた野原の意で、荒れた所を思わせる。
四句「跡なき野辺に」は、人の跡もない野辺にの意で、本巻の第五百九首の二句と同じ句である。
結句「あき風ぞふく」の「ぞ」は係助詞で、「ふく」と連体形で結ぶ。「あき」に秋と飽きとを掛け、心変わりを思わせる。
あさぢはら:丈の低い茅の生えた野原
あき:秋の意と、飽きの意を掛ける
- 作者
- 源実朝
- 出典
- 金槐和歌集
- 前の歌
- 津の国のこやの丸屋の葦簾 間遠になりぬ行き合はずして
- 次の歌
- 三島江や玉江の真菰水隠れて 目にし見えねばかる人もなし