古典和歌stream

しのぶ草忍び忍びに置く露を
人こそ問はね宿は古りにき

歌の意味
しのぶ草にひそかに置く露のように、ひそかに流す涙を、あの人は訪ねてもくれず、家はすっかり古びてしまった。
鑑賞
恋歌 550

詞書は前の歌に続き「故郷恋」
 軒のしのぶ草にひそかに置く露のように、人知れず涙を流しているのに、あの人は訪ねてもくれず、家はすっかり古びてしまったと詠んだ歌である。「しのぶ」の音を重ねた調べが特徴である。
 賀茂真淵はこの歌に合点を付している。

 初句「しのぶ草」は、古い家の軒などに生えるしだの一種で、荒れた家の象徴であり、忍ぶ恋を響かせる。
 二句「しのびしのびに」は、ひそかにひそかにの意で、初句の「しのぶ」と音を重ねている。
 三句「おく露を」は、置く露をの意で、ひそかに流す涙を重ねる。前歌の「露」を受けている。
 四句「人こそとはね」の「こそ」は係助詞で、「とはね」と已然形で結び、逆接で下へ続く。
 結句「宿はふりにき」は、家は古びてしまったの意で、「にき」は完了と過去である。

しのぶぐさ:古い家の軒などに生えるしだの一種
とふ:訪ねる
ふる:古びる
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
草深みさしも荒れたる宿なるを 露を形見に尋ね来しかな
次の歌
宿は荒れて古きみ山の松にのみ 問ふべきものと風の吹くらむ