荒れにけり頼めし宿は草の原
露の軒端にまつ虫の鳴く
- 歌の意味
-
荒れてしまったことだ。頼みに思わせた宿は草の原となり、露に濡れた軒端で松虫が鳴いている。
- 鑑賞
-
恋歌 552
詞書は前の歌に続き「故郷恋」
かつて訪れを約束した恋人の家はすっかり荒れて草の原となり、露に濡れた軒端では、人を待つという名の松虫が鳴いていると詠んだ歌である。
賀茂真淵は四句の「露の軒端に」の続け方を後世風であると評している。
初句「荒れにけり」は、荒れてしまったことだの意で、「けり」は詠嘆である。ここで句切れとなる。
二句「たのめし宿は」は、頼みに思わせた家はの意で、かつて訪れを約束された所をいう。
三句「草のはら」は、草の原の意で、家が草原と化したことを表す。前歌の「宿は荒れて」を受けている。
四句「露の軒端に」は、露に濡れた軒端にの意である。
結句「まつ虫の鳴く」は、松虫と、人を待つこととを掛け、連体形で詠嘆を込めて結んでいる。
たのむ:下二段で、頼みに思わせる
のきば:軒の端
まつむし:松虫と、待つの意を掛ける
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
宿は荒れて古きみ山の松にのみ 問ふべきものと風の吹くらむ
- 次の歌
-
里は荒れて宿は朽ちにし跡なれや 浅茅が露に松虫の鳴く