- 歌の意味
-
山里に住む人の垣根に咲いているなでしこの、その花の心を知る人のいないことよ。
- 鑑賞
-
恋歌 555
詞書「今も見てしが山賤のといふことを」
山里の人の垣根にひっそりと咲くなでしこのように、人知れず思う自分の心を知る人のいないことを嘆いた歌である。古今集の「あな恋し今も見てしか山賤の垣ほに咲ける大和撫子」の句を題として詠んでいる。
類従本では「一本及印本所載歌」の部に収める。底本の注記によれば、原本では題の「山賤の」の「の」が脱けている。
初句「山がつの」は、山里に住む身分の低い人のの意で、本巻の第四百三十八首の三句と同じ語である。
二句「垣ほに咲ける」は、垣根に咲いているの意で、本歌と同じ句である。
三句「なでしこの」は、撫子のの意で、撫でし子に通じていとしい人を思わせる。本巻の第五百三十三首の初句と同じ語である。
四句「花の心を」は、花の心をの意で、人知れず咲く花に自分の思いを重ねる。
結句「知る人のなき」は、知る人のいないことよの意で、連体形で詠嘆を込めて結んでいる。
やまがつ:山里に住む身分の低い人
かきほ:垣根
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
契りけむこれや昔の宿ならむ 浅茅が原に鶉鳴くなり
- 次の歌
-
時雨のみふるの神杉古りぬれど いかにせむとか色のつれなき