待つ宵の更けゆくだにもあるものを
月さへあやな傾きにけり
- 歌の意味
-
待つ宵が更けてゆくだけでもつらいのに、月までもわけもなく西に傾いてしまったことだ。
- 鑑賞
-
恋歌 557
詞書「たのめたる人に」
恋人を待つ宵が更けてゆくだけでもつらいのに、月までもいたずらに西に傾いてしまったと詠んだ歌である。来るはずの人を待ちわびる夜の時間の経過を、月の傾きで表している。
類従本では詞書を「たのめたる人のもとに」とする。
初句「待つ宵の」は、恋人を待つ宵のの意である。
二句「ふけゆくだにも」は、更けてゆくことさえもの意で、「だに」は類推を表す。
三句「あるものを」は、つらいのにの意で、「ものを」は逆接である。字余りである。
四句「月さへあやな」は、月までもわけもなくの意で、「あやな」は、筋が通らないの意である。
結句「傾ぶきにけり」は、傾いてしまったことだの意で、「けり」は詠嘆である。本巻の第五百十八首の「月は出でにけり」が待つ夕べの月の出であったのに対し、ここでは待つ夜の月の入りを詠んでいる。
あやな:筋が通らない、わけもなく
よひ:夜のはじめ
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
時雨のみふるの神杉古りぬれど いかにせむとか色のつれなき
- 次の歌
-
小笹原置く露寒み秋されば まつ虫の音に鳴かぬ夜ぞなき