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小笹原置く露寒み秋されば
まつ虫の音に鳴かぬ夜ぞなき

歌の意味
笹原に置く露が冷たいので、秋になると、待つという名の松虫が声をあげて鳴かない夜はない。私も待って泣かない夜はない。
鑑賞
恋歌 558

詞書は前の歌に続き「たのめたる人に」
 秋になって笹原に置く露が冷たくなると、松虫が鳴かない夜はないように、自分も恋人を待って泣かない夜はないと詠んだ歌である。前歌の待つ宵を受け、待つことを松虫に託している。

 初句「小篠原」は、小さな笹の生えた野原の意で、本巻の第五百首の三句と同じ語である。
 二句「おく露寒み」は、置く露が冷たいのでの意で、「み」は原因や理由を表す。
 三句「秋されば」は、秋になるとの意である。
 四句「まつ虫のねに」は、松虫と待つとを掛け、松虫が声をあげての意となる。
 結句「なかぬ夜ぞなき」は、鳴かない夜はないの意で、虫が鳴くことと自分が泣くこととを重ねている。「ぞ」は係助詞で、「なき」と連体形で結ぶ。

をざさはら:小さな笹の生えた野原
まつむし:松虫と、待つの意を掛ける
さる:季節や時がやって来る
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
待つ宵の更けゆくだにもあるものを 月さへあやな傾きにけり
次の歌
秋の田の穂の上に巣がくささがにの いとわればかり物は思はじ