古典和歌stream

雁のゐる羽風に騒ぐ秋の田の
思ひ乱れてほにぞ出でぬる

歌の意味
雁が降りている、その羽ばたきの風に騒ぐ秋の田の稲穂のように、思い乱れて、とうとう恋心を表に出してしまった。
鑑賞
恋歌 560

詞書は前の歌に続き「ある人のもとに遣はし侍りし」
 雁が降り立つ羽ばたきの風に揺れ乱れる秋の田の稲のように、思い乱れたあまり、とうとう恋心を表に出してしまったと詠んだ歌である。前歌に続き、秋の田の景を用いている。

 初句「雁のゐる」は、雁が降りているの意である。
 二句「羽風にさわぐ」は、羽ばたきの風に揺れ騒ぐの意である。
 三句「秋の田の」は、秋の田の稲のようにの意で、前歌の初句と同じ句である。ここまでが「みだれ」と「ほ」を導く序詞である。
 四句「思ひみだれて」は、思い乱れての意で、稲穂が風に乱れることを重ねる。
 結句「ほにぞ出でぬる」は、稲の穂が出ることと、思いが表に出ることとを掛ける。「ぞ」は係助詞で、「ぬる」と連体形で結ぶ。本巻の第五百三十二首の「ほにでて」と同じく、表に出てしまった恋を詠んでいる。

はかぜ:鳥が羽ばたいて起こす風
ほにいづ:穂が出る意と、表に現れる意を掛ける
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
秋の田の穂の上に巣がくささがにの いとわればかり物は思はじ
次の歌
難波潟汀の葦のいつまでか ほは出でずしも秋を忍ばむ