世の中は常にもがもな渚漕ぐ
海人の小舟の綱手かなしも
- 歌の意味
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世の中はいつまでも変わらないものであってほしい。渚を漕いでゆく漁師の小舟が綱手で引かれていくさまは、しみじみと心にしみることだ。
- 鑑賞
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雑歌 570
詞書は前の歌に続き「旅泊」
渚を漕ぐ漁師の小舟が綱で引かれていくのどかな光景に心を動かされ、この世がいつまでも変わらずにあってほしいと願う歌である。目の前の穏やかな営みを愛おしく思う心と、世の無常を知る心とが一つになっている。小倉百人一首の第九十三番にも鎌倉右大臣の名で選ばれた、実朝の代表歌である。
勅撰集の『新勅撰和歌集』に入集している。万葉集の吹芡刀自の「河上のゆつ岩群に草生さず常にもがもな常処女にて」と、古今集の東歌「陸奥はいづくはあれど塩竈の浦漕ぐ舟の綱手かなしも」をふまえる。賀茂真淵はこの歌に二重の評価の印を付け、万葉の歌に思いを寄せ、末は陸奥の歌の言葉を用いたところがまことに面白く、技巧を凝らすならこのように大きくあるべきだと絶賛している。
初句「世の中は」は、この世の中はの意である。
二句「つねにもがもな」は、いつまでも変わらずにあってほしいの意で、「もがも」は願望、「な」は詠嘆である。二句切れである。
三句「なぎさこぐ」は、渚に沿って漕いでゆくの意である。前の二首の舟泊まりから、昼の渚を漕ぐ舟へと場面を移している。
四句「海士の小舟の」は、漁師の小さな舟のの意である。
結句「綱手かなしも」は、綱で引かれていくさまがしみじみと心にしみるの意で、「かなし」は深く心を動かされる意、「も」は詠嘆である。古今集の東歌の結句をそのまま用いている。
あま:漁師、海で働く人
つなで:舟を岸から引くための綱
- 作者
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源実朝
- 出典
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金槐和歌集
- 前の歌
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也良の崎月影寒し沖つ鳥 鴨といふ舟浮寝すらしも
- 次の歌
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露しげみならはぬ野辺の狩衣 頃しも悲し秋の夕暮