古典和歌stream

片敷きの衣手いたく冴えわびぬ
雪深き夜の峰の松風

歌の意味
片袖を敷いてひとり寝る衣の袖はひどく冷えて耐えがたい。雪の深い夜の峰の松を吹く風よ。
鑑賞
雑歌 585

詞書「屏風の絵に山中に雪降れる所に旅人数多かける所を」
 屏風に描かれた、山中に雪の降る中の旅人たちの姿を見て、その旅人の身になって詠んだ歌である。ひとり寝の袖がひどく冷え、雪深い夜に峰の松風が吹きつける寒さを描いている。
 類従本では旅の部に収め、詞書を「雪降山の中に旅人ふしたる所」とする。賀茂真淵は「さえわびぬ」という句はよくないと評している。

 初句「かたしきの」は、衣の片袖を敷いてひとり寝るの意である。
 二句「衣手いたく」は、衣の袖がひどくの意である。
 三句「さえわびぬ」は、冷えて耐えがたいの意で、三句切れである。前の第五百八十三首の「越えわびぬ」と同じ言い回しである。
 四句「雪ふかき夜の」は、雪の深い夜のの意である。
 結句「嶺の松風」は、峰の松を吹く風の意で、体言止めである。次歌の第五百八十六首、さらに第五百八十七首、第五百八十八首と、屏風歌の結句に松風が続いている。

ころもで:衣の袖
さえわぶ:冷えて耐えがたい
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
雪降りて跡ははかなく絶えむとも こしの山路やまず通はむ
次の歌
暁の夢の枕に雪積もり わが寝覚め訪ふ峰の松風