夕月夜さすや川瀬の水馴れ棹
なれても疎き波の音かな
- 歌の意味
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夕月の光が差し、棹を差す川瀬の、水に馴れた棹のように、馴れていてもなお親しめない波の音であることだ。
- 鑑賞
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雑歌 589
詞書「相模川といふ川あり月さし出でてのち舟に乗りて渡るとて」
相模川を月が出てから舟で渡ったときの歌である。夕月の光が川瀬に差し、船頭が水に馴れた棹を差して進むが、その棹のように何度聞いても馴染めない、夜の川の波の音だと詠んでいる。鎌倉近くの相模川を渡る実体験が詞書から知られる。
類従本では詞書の末尾を「よめる」とする。
初句「夕づく夜」は、夕方に出ている月、またその月の夜の意である。
二句「さすや川瀬の」は、月の光が「差す」と、棹を「差す」とを掛ける。「や」は詠嘆の間投助詞である。
三句「水馴棹」は、水に馴れた棹の意で、ここまでが四句の「なれ」を導く序詞である。
四句「なれてもうとき」は、馴れていても親しめないの意で、「なれ」に棹が水に「馴れ」と、心が「慣れ」とを重ねる。
結句「波の音かな」は、波の音であることだの意で、「かな」は詠嘆である。
ゆふづくよ:夕方の月、夕月の出ている夜
さす:月の光が差す意と、棹を差す意を掛ける
みなれざを:水によく馴れた棹
- 作者
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源実朝
- 出典
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金槐和歌集
- 前の歌
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稀に来て稀に宿借る人もあらじ あはれと思へ庭の松風
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空や海海や空ともえぞ分かぬ 霞も波も立ち満ちにつつ