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春雨にうちそぼちつつあしひきの
山路行くらむ山人や誰

歌の意味
春雨にびっしょり濡れながら、山道を行くのだろう、あの山人は誰なのか。
鑑賞
雑歌 592

詞書「二所へ詣でたりし還向に春雨のいたく降れりしかば」
 二所詣からの帰り道、春雨がひどく降っていたときに詠んだ歌である。春雨に濡れそぼちながら山道を行く山人の姿を見て、あれは誰なのだろうと思いやっている。
 類従本では旅の部に収め、詞書を「二所へまうでし下向に春雨いたく降りしかば読る」とする。底本は二句を「うちこぼちつつ」とするが、賀茂真淵がこれを改めており、ここでは「うちそぼちつつ」と読む。真淵は万葉集の「あしひきの山に行きけむ山人の心も知らず山人や誰」を注記している。

 初句「春雨に」は、春雨にの意である。
 二句「うちそぼちつつ」は、びっしょり濡れながらの意で、「うち」は接頭語、「つつ」は継続を表す。
 三句「足曳の」は「山」にかかる枕詞である。
 四句「山路ゆくらむ」は、山道を行くのだろうの意で、「らむ」は現在推量である。
 結句「山人やたれ」は、山人は誰なのかの意で、万葉集の歌の結句と同じである。次歌の第五百九十三首と同じく春雨を詠み、二首が続いている。

そぼつ:雨などにびっしょり濡れる
やまびと:山に住む人、また仙人
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
箱根路をわが越え来れば伊豆の海や 沖の小島に波の寄る見ゆ
次の歌
春雨はいたくな降りそ旅人の 道行き衣濡れもこそすれ