夜を寒み独り寝覚めの床冴えて
わが衣手に露ぞ置きける
- 歌の意味
-
夜が寒いので、ひとり目覚めた寝床は冷えきって、私の袖には露が置いていたことだ。
- 鑑賞
-
雑歌 595
詞書「ある人都の方へ上り侍りしに便りにつけて詠みて遣はす」
都へ上った人のもとへ、便りに託して贈った歌である。夜の寒さにひとり目覚めた寝床は冷えきり、袖には露が置いていたと詠み、その露に別れた人を思う涙を重ねている。賀茂真淵はこの歌に評価の印を付け、「独り寝覚め」の句はいま少しふさわしくないと評している。
類従本では詞書の末尾を「つかはす」とする。
初句「夜を寒み」は、夜が寒いのでの意で、「を〜み」は原因、理由を表す。この歌から第六百首まで、都へ上った人に贈った一連の歌が続く。
二句「独り寝覚の」は、ひとりで目を覚ましたの意である。
三句「床さえて」は、寝床が冷えきっての意である。
四句「わが衣手に」は、私の袖にの意である。
結句「露ぞおきける」は、露が置いていたことだの意で、「ぞ」は係助詞で「ける」と連体形で結ぶ。露は涙をほのめかしている。
ねざめ:夜中に目が覚めること
ころもで:衣の袖
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
旅を行きし跡の宿守おれおれに 私あれや今朝はいまだ来ぬ
- 次の歌
-
かかる折もありけるものを手枕の 隙漏る風を何厭ひけむ