かかる折もありけるものを手枕の
隙漏る風を何厭ひけむ
- 歌の意味
-
このように離ればなれになる時もあったのに、腕を枕に共寝していた頃、すき間から漏れてくる風をどうして嫌がったのだろうか。
- 鑑賞
-
雑歌 596
詞書は前の歌に続き「ある人都の方へ上り侍りしに便りにつけて詠みて遣はす」
こうして離れて暮らす時が来るとわかっていたなら、共に寝ていた頃に、腕枕のすき間から漏れてくる風を嫌がるのではなかったと詠んだ歌である。今となってはそのすき間風さえ懐かしいという、別れた後の思いを詠んでいる。
初句「かかるをりも」は、このような時もの意で、六音の字余りである。
二句「ありけるものを」は、あったのにの意で、「ものを」は逆接である。
三句「手枕の」は、腕を枕にして寝ることのの意である。
四句「ひまもる風を」は、すき間から漏れてくる風をの意である。前歌の「床さえて」と同じく、寝床の寒さを詠んでいる。
結句「何いとひけむ」は、どうして嫌がったのだろうかの意で、「けむ」は過去推量である。過去の自分への悔いを表している。
たまくら:腕を枕にすること
いとふ:嫌がる、避ける
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
夜を寒み独り寝覚めの床冴えて わが衣手に露ぞ置きける
- 次の歌
-
都辺に夢にも行かむ便りあらば うつの山風吹きも伝へよ