立ち別れいなばの山の時鳥
まつと告げこせ帰り来るがに
- 歌の意味
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別れて去ってゆく因幡の山の時鳥よ、私が待っていると告げておくれ。あの人が帰ってくるように。
- 鑑賞
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雑歌 601
詞書「五月の頃陸奥へまかれりし人の許に扇など遣はし侍りし中に時鳥の書きたるに書きつけ侍りし」
五月の頃、陸奥へ下った人に扇などを贈ったとき、時鳥の描かれた扇に書きつけた歌である。時鳥に、私が待っていると相手に告げてくれ、そうすれば帰ってくるだろうからと託している。古今集の在原行平の「立ち別れいなばの山の峰に生ふるまつとし聞かば今帰り来む」を本歌とし、その返事のような形にしている。
類従本では詞書を「五月の頃陸奥へまかれりし人のもとにあふぎなどあまたつかはし侍りし中に郭公かきたるにかきつけ侍りし歌」とする。定家所伝本では結句の表記を異にする。なお底本の表示では詞書の「扇」の字が判読しにくく、類従本によって補う。
初句「たち別れ」は、別れて去っての意で、本歌の初句と同じである。
二句「いなばの山の」は、因幡国の稲羽山の意で、「いなば」に地名の因幡と「去なば」を掛ける。本歌の二句をそのまま用いている。
三句「時鳥」は、扇に描かれた時鳥で、五月を代表する鳥である。
四句「まつとつげこせ」は、待っていると告げておくれの意で、「まつ」に「松」と「待つ」を掛ける。「こせ」は願望の助動詞「こす」の命令形である。本歌の「まつとし聞かば」を受けている。
結句「歸りくるがに」は、帰ってくるようにの意で、「がに」は目的、願望を表す。本歌の「今帰り来む」を受けている。
いなば:地名の因幡の意と、去なばの意を掛ける
まつ:松の意と、待つの意を掛ける
- 作者
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源実朝
- 出典
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金槐和歌集
- 前の歌
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岩根踏み幾重の峰を越えぬとも 思ひも出でば心隔つな
- 次の歌
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山遠み雲居に雁の越えていなば 我のみひとりねにや鳴きなむ