山遠み雲居に雁の越えていなば
我のみひとりねにや鳴きなむ
- 歌の意味
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山が遠いので、空の彼方へ雁が越えて行ってしまったならば、私ひとりだけが取り残されて、独り寝をしながら声を上げて泣くのだろうか。
- 鑑賞
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雑歌 602
詞書「近う召し使ふ女房遠き国に罷らむとて暇申し侍りしかば」
身近に仕えていた女房が、遠い国へ下るといって暇を願い出たときに詠んだ歌である。遠い山を越えて空の彼方へ去ってゆく雁にその女房をたとえ、残された自分はひとり声を上げて泣くことになるのだろうかと、別れの寂しさを詠んでいる。
類従本では詞書を「ちかうめしつかふ女房」とする。底本の結句は「鳴なん」とあり、定家所伝本と佐佐木信綱の『校註金槐和歌集』によって「鳴きなむ」と読まれており、ここではそれに従う。
初句「山遠み」は、山が遠いのでの意で、「み」は原因、理由を表す。
二句「雲井に雁の」は、空の彼方に雁がの意で、去ってゆく女房を雁にたとえている。
三句「越えていなば」は、越えて行ってしまったならばの意である。
四句「我のみひとり」は、私だけがひとりでの意である。
結句「ねにや鳴きなむ」は、声を上げて泣くのだろうかの意で、「ね」に泣く「音」と「独り寝」の「寝」を掛ける。「や」は疑問の係助詞で、「なむ」と連体形で結ぶ。去る雁の鳴き声と、残される自分の泣く声とが重ねられている。
くもゐ:空、雲のあるはるかな所
ね:泣く声の意と、独り寝の寝の意を掛ける
- 作者
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源実朝
- 出典
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金槐和歌集
- 前の歌
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立ち別れいなばの山の時鳥 まつと告げこせ帰り来るがに
- 次の歌
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来むとしも頼めぬうはの空にだに 秋風吹けば雁は来にけり