来むとしも頼めぬうはの空にだに
秋風吹けば雁は来にけり
- 歌の意味
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来るとも約束していない上空にさえ、秋風が吹けば雁はやって来たことだ。
- 鑑賞
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雑歌 603
詞書「遠き国へまかれりし人八月ばかりには帰り参るべきよしを申して九月までに見えざりしかば彼の人のもとに遣はし侍りし」
遠い国へ下った人が、八月頃には帰って来ると言っておきながら九月になっても姿を見せなかったので、その人に贈った歌である。来るとも約束していない雁でさえ、秋風が吹けば空にやって来るのに、約束したあなたはまだ来ないと、帰らない相手をそれとなく責めている。
類従本では恋の部に収め、初句を「ことしも」とする。
初句「こむとしも」は、来るとでもの意で、「しも」は強意である。
二句「たのめぬうはの」は、あてにさせていないの意で、「うはの空」に続く。
三句「空にだに」は、空にさえの意で、「だに」は軽いものを挙げて重いものを推量させる。「うはの空」には、上空と、心のうわついた様とを響かせる。
四句「秋風ふけば」は、秋風が吹くとの意である。
結句「雁は来にけり」は、雁は来たことだの意で、「けり」は気づきの詠嘆である。次歌の第六百四首と同じ結句で、来る雁と来ない人とを二首続けて対比している。
たのむ:あてにさせる、約束する
うはのそら:上空の意と、うわついて頼りにならない様の意
- 作者
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源実朝
- 出典
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金槐和歌集
- 前の歌
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山遠み雲居に雁の越えていなば 我のみひとりねにや鳴きなむ
- 次の歌
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今来むと頼めし人は見えなくに 秋風寒み雁は来にけり