思ひ出でよ見し世はよそになりぬとも
ありし名残の有明の月
- 歌の意味
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思い出してほしい。ともに過ごした日々は遠いものになってしまったとしても、あの時の名残の有明の月を。
- 鑑賞
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雑歌 607
詞書は前の歌に続き「秋の頃言ひ馴れたる人の物へまかりしに便りにつけて文など遣はすとて」
ともに過ごした日々は遠いよそごとになってしまっても、別れの名残に眺めた有明の月を思い出してほしいと、旅立った相手に願う歌である。前歌で自分が思い出していると詠んだのを受け、相手にも思い出してくれと呼びかけている。
類従本では「一本及印本所載歌」の部に、ほぼ同じ詞書とともに収められている。
初句「思ひいでよ」は、思い出してほしいの意で、命令形による呼びかけである。初句切れである。前歌の「思ひ出でて」を、相手への願いに転じている。
二句「見し世はよそに」は、ともに過ごした世は無縁のものにの意である。
三句「なりぬとも」は、なってしまってもの意で、「とも」は逆接の仮定である。
四句「ありし名残の」は、以前の名残のの意である。
結句「有明の月」は、夜が明けても空に残る月で、体言止めである。初句の「思ひいでよ」の目的語で、倒置となっている。前歌の「月になれにし」の月を、別れの朝の有明の月として受けている。
よそ:自分とかかわりのないもの
なごり:物事が過ぎ去った後に残る気配
- 作者
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源実朝
- 出典
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金槐和歌集
- 前の歌
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うはの空に見し面影を思ひ出でて 月に馴れにし秋ぞ恋しき
- 次の歌
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結ひ初めて馴れしたぶさの濃紫 思はず今も浅かりきとは