- 歌の意味
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鈴懸の、苔で織ったような古びた衣は、山の奥でもこの木の下でも、来ては着て、着馴れたのだろう。
- 鑑賞
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雑歌 611
詞書は前の歌に続き「法眼定忍に逢ひて侍りし時大峰山の物語などしけるを聞きて後に詠める」
修験者が着る鈴懸の衣は、苔で織ったように古びている。その衣は山の奥でも木の下でも、来ては着て着馴らしたものだろうと、長い修行の歳月を思いやった歌である。前歌の「苔の衣」を受けて、修験者の装束に目を向けている。
類従本では神祇の部に収め、四句を「いく木の本に」とする。定家所伝本でも三句、四句を異にする。底本の表示では三句、四句に判読しにくい箇所があり、ここでは「ふる衣」「おくもこのもと」と読む。
初句「すずかけの」は、修験者が衣の上に着る麻の法衣の鈴懸のの意である。
二句「苔おりぎぬの」は、苔で織った衣のの意で、前歌の「苔の衣」と通じる。
三句「ふる衣」は、古びた衣の意である。
四句「おくもこのもと」は、山の奥でもこの木の下でもの意である。
結句「きつつなれけむ」は、来ては着て馴れたのだろうの意で、「き」に「来」と「着」を、「なれ」に衣が「褻れ」と人が「馴れ」を掛ける。伊勢物語の「唐衣きつつなれにし」をふまえる。次歌の第六百十二首と同じ結句である。
すずかけ:修験者が衣の上に着る麻の法衣
く:来る意と、衣を着る意を掛ける
なる:衣が着古されて柔らかくなる意と、慣れ親しむ意を掛ける
- 作者
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源実朝
- 出典
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金槐和歌集
- 前の歌
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奥山の苔の衣に置く露は 涙の雨の雫なりけり
- 次の歌
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幾返り往来の峰のそみかくだ 鈴懸衣きつつなれけむ