- 歌の意味
-
幾度、往来する峰で、そみかくだの鈴懸衣を来ては着て、着馴らしたことだろう。
- 鑑賞
-
雑歌 612
詞書は前の歌に続き「法眼定忍に逢ひて侍りし時大峰山の物語などしけるを聞きて後に詠める」
修験者が峰から峰へ幾度も行き来しながら、粗末な鈴懸衣を着て修行を重ねてきた歳月を思いやった歌である。定忍の語る大峰の修行の話に寄せた一連の結びである。
類従本では神祇の部に収められている。賀茂真淵は「そみかくだ」は蘇民書札のことであると注している。
初句「いくかへり」は、幾度の意である。
二句「往来の嶺の」は、行き来する峰のの意である。大峰の奥駈けのように峰から峰へと渡る修行をさす。
三句「そみかくだ」は、修験者の着る粗末な衣、またその衣の模様をいう語である。
四句「すずかけ衣」は、修験者が衣の上に着る麻の法衣で、前歌の初句「すずかけの」を受けている。
結句「きつつ馴れけむ」は、来ては着て馴れたのだろうの意で、「き」に「来」と「着」を、「なれ」に「褻れ」と「馴れ」を掛ける。前歌と同じ結句である。
そみかくだ:修験者の着る粗末な衣、蘇民書札
すずかけ:修験者が衣の上に着る麻の法衣
く:来る意と、衣を着る意を掛ける
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
鈴懸の苔織衣の古衣 おくもこのもときつつなれけむ
- 次の歌
-
神風や朝日の宮の宮遷し 影のどかなる世にこそありけれ