古典和歌stream

冬ごもり那智の嵐の寒ければ
苔の衣の薄くやあるらむ

歌の意味
冬ごもりの頃、那智の山の嵐が寒いので、そこで修行する人の苔の衣は薄く感じられることだろう。
鑑賞
雑歌 637

詞書「屏風に同じ山を描きたる所」
 屏風に那智の山が描かれているのを見て詠んだ歌である。冬の那智の山に吹く嵐は寒いので、そこで修行する人の粗末な衣はさぞ薄く感じられるだろうと、行者の身を思いやっている。
 類従本では詞書を「屏風になちのみ山書きたる所」とし、初句の一字を異にする。

 初句「冬ごもり」は、冬の間こもって過ごすことの意である。
 二句「那智の嵐の」は、那智の山に吹く嵐のの意で、前歌の那智の山を受けている。
 三句「寒ければ」は、寒いのでの意である。
 四句「苔の衣の」は、修行者の粗末な衣のの意で、本巻の第六百十首の「苔のころも」と同じ語である。
 結句「うすくやあるらむ」は、薄く感じられることだろうかの意で、「や」は疑問の係助詞で「らむ」と連体形で結ぶ。

ふゆごもり:冬の間こもって過ごすこと
こけのころも:僧や修行者の粗末な衣
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
み熊野の那智のお山に引く注連の うちはへてのみ落つる滝かな
次の歌
わたつ海の中に向かひていづる湯の いづのお山とうべも言ひけり