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走湯の神とはうべも言ひけらし
速き験のあればなりけり

歌の意味
走湯の神とはなるほどうまく名づけたものらしい。速やかなご利益があるからなのだ。
鑑賞
雑歌 639

詞書は前の歌に続き「走湯山参詣の時」
 走湯山の神を「走湯の神」と呼ぶのはもっともらしい、湯が走り出るように速やかなご利益があるからだと詠んだ歌である。前歌が「伊豆」の名の由来を詠んだのに対し、本歌は「走湯」の名の由来を神の霊験に結びつけている。賀茂真淵はこの歌に評価の印を付けている。
 類従本、定家所伝本では初句の表記を異にする。底本の「うべ」は前歌と同じく真淵の訂正に従う。

 初句「走湯の」は、走湯山の、すなわち伊豆山権現のの意である。
 二句「神とはうべも」は、神とはなるほどの意で、前歌の結句「うべもいひけり」を受けている。
 三句「いひけらし」は、言ったものらしいの意で、「けらし」は過去の推定である。三句切れである。
 四句「はやきしるしの」は、速やかなご利益のの意で、「はやき」は湯が「走る」の縁である。次歌の第六百四十首でも「はやき」「しるし」の語が用いられている。
 結句「あればなりけり」は、あるからなのだの意で、「けり」は気づきの詠嘆である。

しるし:神仏のご利益、霊験
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
わたつ海の中に向かひていづる湯の いづのお山とうべも言ひけり
次の歌
伊豆の国や山の南に出づる湯の 速きは神の験なりけり