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世の中は鏡に映る影にあれや
あるにもあらず無きにもあらず

歌の意味
世の中は鏡に映る影なのだろうか。有るのでもなく、無いのでもない。
鑑賞
雑歌 650

詞書「大乗作中道観歌」
 大乗仏教の中道観を詠んだ歌である。世の中は鏡に映る影のようなもので、確かに有るともいえず、まったく無いともいえないと詠み、有と無のいずれにもとらわれない中道の考えを、鏡の影というわかりやすいたとえで表している。賀茂真淵はこの歌に評価の印を付けている。

 初句「世の中は」は、この世の中はの意である。
 二句「鏡にうつる」は、鏡に映るの意である。
 三句「影にあれや」は、影なのだろうかの意で、「や」は疑問である。三句切れである。
 四句「あるにもあらず」は、有るのでもないの意である。
 結句「なきにもあらず」は、無いのでもないの意で、四句と対句をなしている。前歌の地獄の恐ろしさから、有無を超える悟りの境地へと進んでいる。

ちゆうだう:有と無などの両極端にとらわれない立場、中道
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
炎のみ虚空に満てる阿鼻地獄 行方もなしと言ふもはかなし
次の歌
神と言ひ仏と言ふも世の中の 人の心のほかのものかは