思ひ出でて夜はすがらに音をぞ泣く
ありし昔の世々の古事
- 歌の意味
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思い出して、夜は一晩中声を上げて泣くことだ。過ぎ去った昔の、さまざまな時代の出来事を。
- 鑑賞
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雑歌 680
詞書は前の歌に続き「相州の土屋といふ所に年九十に余れる朽ち法師あり、おのづから来たり、昔語りなどせしついでに、身の立ち居に堪へずなむなりぬる事を泣く泣く申して出でぬ。時に老といふ事を人々に仰せて仕うまつらせしついでに詠み侍りし」
過ぎ去った昔のさまざまな出来事を思い出して、夜は一晩中声を上げて泣いていると、老法師の身になって詠んだ歌である。前歌の思い出す寝覚めを受け、思い出すことが涙を誘うという老いの悲しみを詠んでいる。賀茂真淵はこの歌に評価の印を付けている。
勅撰集の『新勅撰和歌集』に入集している。なお底本の表示は三句の頭が判読しにくく、ここでは「ねをぞなく」と読む。
初句「思ひ出でて」は、思い出しての意で、六音の字余りである。前歌の三句「思ひ出でつ」を受けている。
二句「よるはすがらに」は、夜は一晩中の意である。前歌の「よるの寝覚」を受けている。
三句「ねをぞなく」は、声を上げて泣くの意で、「ぞ」は係助詞で「なく」と連体形で結ぶ。三句切れである。
四句「ありし昔の」は、過ぎ去った昔のの意である。
結句「世々のふるごと」は、さまざまな時代の昔の出来事の意で、体言止めである。初句の「思ひ出でて」の目的語で、倒置となっている。
すがら:初めから終わりまで、一晩中
ふるごと:昔の出来事、昔話
- 作者
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源実朝
- 出典
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金槐和歌集
- 前の歌
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われ幾そ見し世の事を思ひ出でつ 明くるほどなき夜の寝覚めに
- 次の歌
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なかなかに老いは惚れても忘れなで などか昔をいと偲ぶらむ