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あはれなり雲居のよそに行く雁も
かかる姿になりぬと思へば

歌の意味
あわれなことだ。空のはるか彼方を飛んで行く雁も、このような姿になってしまったと思うと。
鑑賞
雑歌 701

詞書「まな板といふ物の上に雁をあらぬさまにして置きたるを見て」
 まな板の上に、雁が無残な姿で置かれているのを見て詠んだ歌である。空のはるか彼方を自由に飛んでいた雁も、このような姿になってしまったのだと思うと、あわれでならないと詠み、生きものの命への深い慈しみを表している。
 類従本では詞書の末尾を「見てよめる」とし、初句と三句の表記を異にする。

 初句「あはれなり」は、あわれなことだの意で、初句切れである。
 二句「雲井のよそに」は、空のはるか彼方にの意である。
 三句「行く雁も」は、飛んで行く雁もの意である。
 四句「かかるすがたに」は、このような姿にの意で、まな板の上の雁をさす。二句の空を飛ぶ姿と対比されている。
 結句「なりぬと思へば」は、なってしまったと思うとの意で、倒置によって初句の「あはれ」の理由を後に示している。

くもゐ:空、雲のあるはるかな所
まないた:食材を切るための板
作者
源実朝
出典
金槐和歌集
前の歌
いにしへを偲ぶとなしに石上 ふりにし里に我は来にけり
次の歌
ぬばたまの闇の暗きに天雲の 八重雲隠れ雁ぞ鳴くなる