沢辺より雲居に通ふ葦鶴も
憂きことあれや音のみ鳴くらむ
- 歌の意味
-
沢辺から空へと通う葦辺の鶴も、つらいことがあるのだろうか、声を上げて鳴いてばかりいるのは。
- 鑑賞
-
雑歌 703
詞書は底本の表示から判読できない
沢辺から空高く飛び交う鶴も、何かつらいことがあるのだろうか、声を上げて鳴いてばかりいると詠んだ歌である。自由に空を行き来する鶴にさえ憂いがあるのかと、鳴き声に自らの憂いを重ねている。
なお底本の表示は三句、四句の頭が判読しにくく、ここでは「あしたづも」「うきことあれや」「ねのみ鳴くらむ」と読む。
初句「澤邊より」は、沢のほとりからの意である。
二句「雲井にかよふ」は、空へと行き来するの意で、前の二首の「雲井」「雲」を受けている。
三句「あしたづも」は、葦辺にいる鶴もの意である。前歌の雁から、鶴へと移っている。
四句「うきことあれや」は、つらいことがあるのだろうかの意で、「や」は疑問である。
結句「ねのみ鳴くらむ」は、声を上げて鳴いてばかりいるのだろうかの意で、「らむ」は現在推量である。
あしたづ:葦辺にいる鶴
ね:泣く声、鳴く声
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
ぬばたまの闇の暗きに天雲の 八重雲隠れ雁ぞ鳴くなる
- 次の歌
-
朝ぼらけ跡なき波に鳴く千鳥 あなことごとしあはれいつまで