聞きてしも驚くべきにあらねども
はかなき夢の世にこそありけれ
- 歌の意味
-
聞いても驚くべきことではないけれども、やはりはかない夢のような世であることだ。
- 鑑賞
-
雑歌 713
詞書「日ごろ病むとも聞かざりし人暁はかなくなりにけるを聞きて詠める」
日ごろ病気だとも聞いていなかった人が、明け方に急に亡くなったと聞いて詠んだ歌である。人の命のはかなさは知っているので、聞いて驚くべきことではないけれども、それでもやはりこの世ははかない夢のようなものだと、改めて無常を思い知った心を詠んでいる。
類従本では詞書の一部の表記を異にする。
初句「聞きてしも」は、聞いたとしてもの意で、「しも」は強意である。
二句「驚くべきに」は、驚くべきことにはの意である。
三句「あらねども」は、ないけれどもの意で、逆接である。
四句「はかなき夢の」は、はかない夢のの意である。前歌の結句「夢にぞありける」を受けている。
結句「世にこそありけれ」は、世であることだの意で、「こそ」は係助詞で「けれ」と已然形で結ぶ。前歌の観念としての無常から、身近な人の死という現実の無常へと移っている。
はかなくなる:亡くなる
- 作者
-
源実朝
- 出典
-
金槐和歌集
- 前の歌
-
世の中に賢きこともはかなきも 思ひし解けば夢にぞありける
- 次の歌
-
いとほしや見るに涙もとどまらず 親もなき子の母を尋ぬる