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いつしかと明けゆく空の霞めるは
天の戸よりや春は立つらむ

歌の意味
早くも明けてゆく空が霞んでいるのは、天上の戸口から春が立ち出たからだろうか。
鑑賞
巻第一 春歌 3

 夜明けの空がもう霞んでいるのを見て、春は天上の戸口から立ち出てくるのだろうかと推量した歌である。霞を立春のしるしとし、天上から春が訪れるという大きな想像を示している。
 作者の「顕仲_藤原」は、藤原資仲の子の藤原顕仲である。堀河天皇の時代の歌壇で活躍した歌人である。

 初句「いつしかと」は早くも、いつの間にかの意で、春の訪れを待ちかねていた心が込められている。
 二句「明けゆく空の」は夜が次第に明けてゆく空で、「明け」は戸を開ける意を響かせ、四句の「天の戸」と縁語になっている。
 三句「霞めるは」は霞がかかっているさまで、霞は立春を告げる代表的な景物である。
 四句「天の戸よりや」は天の岩戸、天上の戸口のことで、天から春が立ち出るという想像を示す。係助詞「や」による疑問である。
 結句「春は立つらむ」は、霞が「立つ」ことと春が「立つ」こととを重ねた表現で、「らむ」は原因を推量する。次歌の第四首も同じ結句で、天上から春が立つとする本首に対し、川の水上から春が立つとして対をなしている。

あまのと:天の岩戸、天上界の戸口
かすむ:霞がかかってぼんやり見える
作者
藤原顕仲
出典
金葉和歌集
前の歌
春立ちてこずゑに消えぬ白雪は まだきに咲ける花かとぞ見る
次の歌
つららゐし細谷川の解けゆけば 水上よりや春は立つらむ