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梅の花にほふあたりはよきてこそ
急ぐ道をば行くべかりけれ

歌の意味
梅の花が香るあたりは避けて、急ぐ道を行くべきであったよ。
鑑賞
巻第一 春歌 17

 急ぎの道中、梅の香に心を引かれて足が止まってしまったことを、梅の香るあたりは避けて通るべきだったと逆説的に詠む歌である。梅の香の魅力の強さを、後悔の形で讃えている。本首から第二十一首まで梅の歌が並ぶ。
 作者の「良暹」は平安時代中期の天台宗の僧である。祇園の別当を務めたと伝えられ、後拾遺和歌集以下の勅撰集に歌が採られ、小倉百人一首にも歌が入っている。

 初句「梅の花」と主題を示し、ここから梅の歌の一連が始まる。
 二句「にほふあたりは」の「にほふ」は美しく香る意で、梅については主に香りをいう。
 三句「よきてこそ」の「よく」は避ける意で、係助詞「こそ」が結句の已然形「けれ」と係り結びをなす。
 四句「急ぐ道をば」は急ぎの道中であることを強調する。
 結句「行くべかりけれ」は行くべきであったの意で、梅の香に引き止められたことへの詠嘆を込めている。

よく:避ける、よけて通る
にほふ:美しく照り映える、また香る
作者
良暹
出典
金葉和歌集
前の歌
春雨は降りしむれども鶯の 声はしをれぬものにぞありける
次の歌
梅が枝に風や吹くらむ春の夜は 折らぬ袖さへにほひぬるかな