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声せずはいかで知らまし春霞
へだつる空に帰る雁がね

歌の意味
声がしなかったら、どうして知ることができようか。春霞が隔てている空を北へ帰ってゆく雁を。
鑑賞
巻第一 春歌 27

 春霞にさえぎられて姿の見えない空を、北へ帰る雁を声によって知ったことを詠む歌である。見えないものを声で知るという趣向で、次歌とともに帰雁の歌の対をなしている。

 初句「声せずは」は声がしなかったならばの意の仮定条件である。
 二句「いかで知らまし」は反実仮想で、どうして知ることができようか、いや知ることはできないの意となる。ここで句切れとなる二句切れである。
 三句「春霞」は雁の姿をさえぎるものとして置かれている。
 四句「へだつる空に」は霞が隔てている空にの意である。
 結句「帰る雁がね」は春に北国へ帰る雁で、体言止めで結ぶ。次歌の第二十八首も「雁がね」の語を受けて続いている。

かりがね:雁、またその鳴き声
へだつ:間をさえぎる
出典
金葉和歌集
前の歌
糸鹿山くる人もなき夕暮に 心細くも呼子鳥かな
次の歌
今はとて越路に帰る雁がねは 羽もたゆくや行きかへるらむ