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今はとて越路に帰る雁がねは
羽もたゆくや行きかへるらむ

歌の意味
今はもう去る時だと越路へ帰ってゆく雁は、羽も疲れてだるくなりながら行き来するのだろうか。
鑑賞
巻第一 春歌 28

 春になって北国の越路へ帰ってゆく雁を思いやり、毎年秋には来て春には帰る往復の旅に、羽も疲れていることだろうと推量した歌である。

 初句「今はとて」は今はもう別れの時だとしての意である。
 二句「越路に帰る」の「越路」は北陸道、越の国への道で、雁の帰る北国を指す。
 三句「雁がねは」は前歌の第二十七首の結句「帰る雁がね」を受け、同じ帰雁を主題とする。
 四句「羽もたゆくや」の「たゆく」はだるく疲れるの意の形容詞で、係助詞「や」が結句の「らむ」と呼応する。
 結句「行きかへるらむ」は秋に来て春に帰る雁の往復を指し、「らむ」で推量している。

こしぢ:北陸地方の越の国へ向かう道
ゆきかへる:行っては帰る、往復する
出典
金葉和歌集
前の歌
声せずはいかで知らまし春霞 へだつる空に帰る雁がね
次の歌
吉野山峰の桜や咲きぬらむ 麓の里ににほふ春風