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吉野山峰の桜や咲きぬらむ
麓の里ににほふ春風

歌の意味
吉野山の峰の桜が咲いたのだろうか。麓の里に香りを運んで春風が吹いている。
鑑賞
巻第一 春歌 29

 麓の里に花の香りを含んだ春風が吹いてくることから、吉野山の峰の桜が咲いたのだろうと推量した歌である。見えない峰の花を香りによって知るという構成で、本首から桜の歌が始まる。
 作者の「忠通」は、藤原忠実の子で摂政関白太政大臣に至った藤原忠通である。法性寺関白と呼ばれた。漢詩や書にもすぐれた。

 初句「吉野山」は大和国の歌枕で、桜の名所として名高い。本首から桜の歌の一連が始まる。
 二句「峰の桜や」は峰に咲く桜で、係助詞「や」が疑問を表す。
 三句「咲きぬらむ」は咲いたのだろうかの意で、ここで句切れとなる三句切れである。
 四句「麓の里に」は峰と対比される位置で、峰の桜の香りが麓まで届くことを示す。
 結句「にほふ春風」と体言止めで結ぶ。桜の香りを含んで吹く春風をとらえ、本巻の第十八首で梅の香を風に託したのと同じく、香りで花を知る趣向である。

にほふ:香りを漂わせる
ふもと:山のすそ
作者
藤原忠通
出典
金葉和歌集
前の歌
今はとて越路に帰る雁がねは 羽もたゆくや行きかへるらむ
次の歌
尋ねつる我をや春も待ちつらむ 今ぞさかりににほひましける