斧の柄は木のもとにてや朽ちなまし
春を限らぬ桜なりせば
- 歌の意味
-
もし春に限らずいつまでも咲く桜であったならば、見とれているうちに斧の柄は木の下で朽ちてしまっただろうか。
- 鑑賞
-
巻第一 春歌 48
仙人の碁を見ているうちに斧の柄が朽ちるほどの年月が過ぎたという中国の故事を踏まえ、もし桜が一年中咲いていたら、見とれているうちに斧の柄も朽ちてしまうだろうと詠む歌である。桜の美しさに時を忘れる心を、故事を借りて表している。
初句「斧の柄は」は、晋の王質が山中で童子の碁を見ているうちに斧の柄が朽ちていたという故事による語で、長い時の経過を表す。
二句「木のもとにてや」は桜の木の下での意で、係助詞「や」が疑問を表す。
三句「朽ちなまし」は朽ちてしまっただろうの意で、反実仮想の「まし」が結句の「せば」と呼応する。ここで句切れとなる三句切れである。
四句「春を限らぬ」は春の季節に限らないの意である。
結句「桜なりせば」は桜であったならばの意の反実仮想で、上の句との倒置になっている。
をののえ:斧の柄。長い時が過ぎることのたとえ
このもと:木の下
- 出典
-
金葉和歌集
- 前の歌
-
桜花咲きぬる時は吉野山 立ちものぼらぬ峰の白雲
- 次の歌
-
散りつもる庭をぞ見まし桜花 風より先に尋ねざりせば