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こずゑには吹くとも見えで桜花
かをるぞ風のしるしなりける

歌の意味
梢には風が吹いているとも見えないが、桜の花が香ることこそが、風の吹いている証であった。
鑑賞
巻第一 春歌 59

 梢の花が揺れることもないほどの微風であるのに、桜の香りが漂ってくることで風の存在を知ったと詠む歌である。目に見えない風を香りでとらえる繊細な感覚がうかがえる。
 作者の「俊頼」は、源経信の子の源俊頼である。白河院の命により本集金葉和歌集を撰んだ。革新的な歌風で知られる。

 初句「こずゑには」は枝先にはの意である。
 二句「吹くとも見えで」は吹いているとも見えないでの意で、「で」は打消の接続助詞である。
 三句「桜花」は香りの主を示す。
 四句「かをるぞ風の」の「ぞ」は係助詞で、結句の連体形「ける」と係り結びをなす。
 結句「しるしなりける」の「しるし」は風が吹いている証拠の意である。本巻の第二十九首でも春風の香りから峰の桜を知っており、香りを手がかりとする点で通じている。

しるし:証拠、しるし
作者
源俊頼
出典
金葉和歌集
前の歌
今朝見れば夜半の嵐に散りはてて 庭こそ花の盛りなりけれ
次の歌
春ごとに同じ桜の花なれば 惜しむ心もかはらざりけり