庭の花もとのこずゑに吹きかへせ
散らすのみやは心なるべき
- 歌の意味
-
庭に散った花を、もとの梢に吹き返してくれ、風よ。散らすことばかりがお前の心であってよいものか。
- 鑑賞
-
巻第一 春歌 66
庭に散り敷いた花を、もとの梢に吹き返せと風に呼びかけた歌である。花を散らすばかりが風の本心ではあるまいと、風の情けに訴える奇抜な発想である。
作者の「郁芳門院安芸」は白河天皇の皇女である郁芳門院に仕えた女房である。
初句「庭の花」は庭に散り敷いた花で、本巻の第五十八首の「庭こそ花の盛り」とも通じる。
二句「もとのこずゑに」は花の咲いていたもとの枝先である。
三句「吹きかへせ」は吹き返せの意の命令で、風に呼びかけている。ここで句切れとなる三句切れである。
四句「散らすのみやは」の「やは」は反語で、散らすばかりがであろうか、いやそうではないの意となる。
結句「心なるべき」は本心であるはずだろうかの意で、風の心を問いただしている。
ふきかへす:吹いてもとに返す
- 作者
-
郁芳門院安芸
- 出典
-
金葉和歌集
- 前の歌
-
桜花雲かかるまでかきつめて 吉野の山と今日は見るかな
- 次の歌
-
衣手に昼は散りつむ桜花 夜は心にかかるなりけり