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限りありて散るだに惜しき山吹を
いたくな折りそ井手の川波

歌の意味
定めがあって自然に散るのさえ惜しい山吹を、ひどく折ってくれるな、井手の川波よ。
鑑賞
巻第一 春歌 77

 井手の川べりに咲く山吹が川波に打たれて折れるのを惜しみ、川波に向かってひどく折ってくれるなと呼びかけた歌である。前歌が人に向けた禁止であったのに対し、本首は川波に向けている。
 作者の「忠通」は、藤原忠実の子で摂政関白太政大臣に至った藤原忠通である。法性寺関白と呼ばれた。漢詩や書にもすぐれた。

 初句「限りありて」は本巻の第二十一首と同じ初句で、花の命の定めをいう。
 二句「散るだに惜しき」は散ることさえ惜しいの意で、「だに」は程度の軽いものを挙げて重いものを類推させる副助詞である。
 三句「山吹を」と対象を示す。
 四句「いたくな折りそ」はひどく折ってくれるなの意で、前歌の第七十六首の「折りなつくしそ」と同じ禁止の形をとる。
 結句「井手の川波」は山城国の歌枕で、山吹と蛙の名所である井手の川の波に呼びかけている。

ゐで:山城国の歌枕。山吹の名所
かはなみ:川に立つ波
作者
藤原忠通
出典
金葉和歌集
前の歌
わが宿にまたこむ人も見るばかり 折りなつくしそ山吹の花
次の歌
春深み神なび川に影見えて うつろひにけり山吹の花