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残りなく暮れゆく春を惜しむとて
心をさへもつくしつるかな

歌の意味
残りなく暮れてゆく春を惜しむというので、春ばかりでなく心までもすっかり尽くしてしまったことだ。
鑑賞
巻第一 春歌 90

 春が残りなく尽きてゆくのを惜しむあまり、自分の心までも尽くしてしまったと詠む歌である。春が「尽きる」ことと心を「尽くす」こととを重ね、惜春の情の深さを表している。

 初句「残りなく」はすっかり、余すところなくの意である。
 二句「暮れゆく春を」は終わろうとしている春で、暮春の主題を示す。
 三句「惜しむとて」は惜しむというのでの意である。
 四句「心をさへも」の「さへ」は添加を表し、春ばかりでなく心までもの意となる。
 結句「つくしつるかな」は尽くしてしまったことだの意で、春が尽きることと心を尽くすこととを重ねている。

つくす:すっかりなくす、ありったけ費やす
出典
金葉和歌集
前の歌
春のゆく道にきむかへほととぎす かたらふ声に立ちやとまると
次の歌
春は惜し人はこよひと頼むれば 思ひわづらふ今日の暮かな