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雪の色を奪ひて咲ける卯の花に
小野の里人冬ごもりすな

歌の意味
雪の白さを奪い取ったように白く咲いている卯の花を見て、小野の里の人よ、冬が来たと思って冬ごもりなどしないでくれ。
鑑賞
巻第二 夏歌 98

 雪の白さを奪ったかのように咲く卯の花を雪と見まちがえて、雪深い小野の里の人々が冬ごもりをしないように、と呼びかける歌である。卯の花の白さを雪に見立てる趣向を、里人への呼びかけという形でおもしろく表している。
 小野は比叡山の西麓の地で、伊勢物語に雪を踏み分けて惟喬親王を訪ねる話があるように、雪深い里として知られていた。
 本歌から第百三首までは卯の花の歌が続き、雪、月光、垣根、神の標などさまざまなものに見立てられていく。
 作者の「公実」は、藤原実季の子で権大納言に至った藤原公実である。春宮大夫を兼ねた。堀河天皇の時代の歌壇で活躍した歌人である。

 初句「雪の色を」は雪の白さで、初句から卯の花を雪に見立てる趣向を示している。字余りの句である。
 二句「奪ひて咲ける」は雪の白さを奪い取って咲いているの意で、花が雪の色を自分のものにしたという擬人的な表現である。
 三句「卯の花に」は卯の花を見て、の意で、初夏を代表する白い花を取り上げる。
 四句「小野の里人」は雪深い地として知られる小野の里に住む人々で、呼びかけの対象である。
 結句「冬ごもりすな」の「な」は禁止の終助詞で、冬ごもりをするなと呼びかけている。卯の花を雪と見まちがえるだろうという想像を、命令の形で言い表したものである。

うのはな:ウツギの花。初夏に白い花を咲かせる
ふゆごもり:冬の間、家にこもって過ごすこと
作者
藤原公実
出典
金葉和歌集
前の歌
玉柏庭も葉広になりにけり こや木綿しでて神祭る頃
次の歌
いづれをかわきて折らまし山里の 垣根つづきに咲ける卯の花