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卯の花の咲かぬ垣根はなけれども
名に流れたる玉川の里

歌の意味
卯の花の咲かない垣根などどこにもないけれども、卯の花の名所として名が世に流れ広まっているのは玉川の里である。
鑑賞
巻第二 夏歌 101

 卯の花はどこの垣根にも咲いているが、その名所として特に名高いのは玉川の里である、と詠む歌である。どこにでもある花と、名の知られた名所とを対比し、歌枕の玉川の里をたたえている。
 卯の花の名所としての玉川の里は、後拾遺和歌集の相模の歌に、見渡すと卯の花が波のしがらみをかけたように咲いていると詠まれており、本歌はそうした名所の評判を踏まえている。
 本巻の第九十八首から第百三首までは卯の花の歌が続き、雪、月光、垣根、神の標などさまざまなものに見立てられていく。
 作者の「忠通」は、藤原忠実の子で摂政関白太政大臣に至った藤原忠通である。法性寺関白と呼ばれた。漢詩や書にもすぐれた。

 初句「卯の花の」は初夏の白い花である卯の花を取り上げる。
 二句「咲かぬ垣根は」は卯の花の咲かない垣根はの意で、前々歌の第九十九首の「垣根つづきに」と同じく、垣根に咲く卯の花の姿を踏まえている。
 三句「なけれども」はないけれどもの意の逆接で、どこにでも咲いていることを認めたうえで下の句に転じる。
 四句「名に流れたる」は名が世に広く伝わっているの意である。「流れ」は結句の「玉川」の縁語となっている。
 結句「玉川の里」は摂津の歌枕で、卯の花の名所である。体言止めで名所の名を示して結んでいる。

たまがは:摂津の歌枕。卯の花の名所として知られる
作者
藤原忠通
出典
金葉和歌集
前の歌
雪としもまがひもはてず卯の花は 暮るれば月の影かとも見ゆ
次の歌
神山の麓に咲ける卯の花は 誰が標結ひし垣根なるらむ