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賤の女が葦火焚く屋も卯の花の
咲きしかかればやつれざりけり

歌の意味
身分の低い女が葦を焚く粗末な家も、卯の花が咲きかかっているので、みすぼらしくは見えないことだ。
鑑賞
巻第二 夏歌 103

 身分の低い女が葦を燃やして煙にすすけた粗末な家も、卯の花が白く咲きかかっていると、みすぼらしく見えない、と詠む歌である。貧しい家の暗さと卯の花の白さを対比し、花の力で家までが美しく見える驚きを表している。
 本歌で卯の花の一連は終わる。第九十八首から雪、月光、垣根、神の標と見立てを重ねてきた一連を、身近な庶民の家の景で結んでいる。
 作者の「経信」は、源道方の子で大納言に至った源経信である。桂大納言と呼ばれた。晩年は大宰権帥として任地で没した。撰者源俊頼の父である。

 初句「賤の女が」は身分の低い女がの意で、庶民の暮らしを取り上げる。
 二句「葦火焚く屋も」は葦を燃料として焚く粗末な家もの意で、煙にすすけた暗い住まいを思わせる。
 三句「卯の花の」は白い卯の花で、二句の暗い家と対比されている。
 四句「咲きしかかれば」の「し」は強意の副助詞で、卯の花が家に咲きかかっているのでの意となる。
 結句「やつれざりけり」はみすぼらしくならなかったことだの意で、詠嘆の「けり」で結ぶ。

しづのめ:身分の低い女
あしび:葦を燃料として焚く火
やつる:みすぼらしくなる
作者
源経信
出典
金葉和歌集
前の歌
神山の麓に咲ける卯の花は 誰が標結ひし垣根なるらむ
次の歌
み山出でてまだ里なれぬほととぎす 旅の空なる音をや鳴くらむ