恋すてふ無き名や立たむほととぎす
待つに寝ぬ夜の数し積もれば
- 歌の意味
-
恋をしているという根も葉もない評判が立つだろうか。ほととぎすを待って寝ない夜の数が積み重なるので。
- 鑑賞
-
巻第二 夏歌 110
ほととぎすを待って眠らない夜が重なるので、人から恋をしているという身に覚えのない噂を立てられるだろうか、と詠む歌である。ほととぎすを待つ夜を、恋人を待つ夜になぞらえたおもしろさがある。
初句の「恋すてふ」は、小倉百人一首にも採られた壬生忠見の歌の初句と同じで、恋の評判が立つという先例の趣向を、ほととぎすを待つ心に転じている。
本巻の第百四首から第百二十六首まではほととぎすの歌が続く。初音を待ち、尋ね、聞き得た喜びや聞き逃した嘆きなど、ほととぎすをめぐるさまざまな心が詠まれていく。
初句「恋すてふ」は「恋すといふ」のつづまった形で、恋をしているというの意である。
二句「無き名や立たむ」の「無き名」は根拠のない評判で、係助詞「や」と推量の「む」が結び、立つだろうかと危ぶんでいる。ここで句切れとなる二句切れの歌で、以下は理由を述べる倒置である。
三句「ほととぎす」は待つ対象であり、恋人ではなく鳥を待っていることを明かしている。
四句「待つに寝ぬ夜の」は待って眠らない夜のの意である。本巻の第百十九首の「待つ夜の数」と同じく、ほととぎすを待つ夜の数を詠んでいる。
結句「数し積もれば」の「し」は強意の副助詞で、数が積み重なるのでの意となり、二句の理由を示している。
なきな:根も葉もない評判、濡れ衣
- 出典
-
金葉和歌集
- 前の歌
-
年ごとに聞くとはすれどほととぎす 声は古りせぬものにぞありける
- 次の歌
-
ほととぎす心も空にあくがれて 夜離れがちなるみ山辺の里