玉江にや今日のあやめを引きつらむ
磨ける宿のつまに見ゆるは
- 歌の意味
-
美しい玉江の入り江で、今日の節句のあやめを引いてきたのだろうか。磨き上げた家の軒端に見えるあやめの見事さは。
- 鑑賞
-
巻第二 夏歌 130
磨き上げた立派な家の軒端に葺かれたあやめが見事なので、玉江の入り江で引いてきたものだろうかと推し量る歌である。「玉」「磨く」の縁語を用い、輝くような家と美しいあやめとをたたえている。
本巻の第百二十七首から第百三十四首までは、五月五日の端午の節句に軒に葺いたり、根の長さを競ったりしたあやめ草の歌が続く。
作者の「公実」は、藤原実季の子で権大納言に至った藤原公実である。春宮大夫を兼ねた。堀河天皇の時代の歌壇で活躍した歌人である。
初句「玉江にや」の「玉江」は越前などの歌枕とされる入り江で、係助詞「や」が三句の「らむ」と係り結びをなす。「玉」は四句の「磨ける」の縁語である。本巻の第百三十七首にも「玉江」が詠まれている。
二句「今日のあやめを」の「今日」は端午の節句の当日を指す。
三句「引きつらむ」は引いてきたのだろうかの意で、「つ」は完了、「らむ」は現在推量の助動詞である。ここで句切れとなる三句切れの歌で、下の句は倒置となっている。
四句「磨ける宿の」は磨き上げた家ので、立派な住まいをいう。
結句「つまに見ゆるは」の「つま」は軒の端で、そこに葺かれたあやめが見えることをいう。
たまえ:美しい入り江。越前などの歌枕
つま:軒の端
- 作者
-
藤原公実
- 出典
-
金葉和歌集
- 前の歌
-
あやめ草引く手もたゆく長き根の いかであさかの沼に生ひけむ
- 次の歌
-
あやめ草我が身の憂きを引きかへて なべてならぬに生ひも出でなむ