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あやめ草我が身の憂きを引きかへて
なべてならぬに生ひも出でなむ

歌の意味
あやめ草よ、我が身のつらさとは引き替えて、並々ではないすぐれた姿で生え出てほしい。
鑑賞
巻第二 夏歌 131

 あやめ草に向かって、つらいことの多い我が身とは引き替えに、並々ではないすぐれた姿で生え出てほしい、と願う歌である。あやめ草を「引く」ことにかけて、我が身の憂さを引き替えたいという心をこめている。
 本巻の第百二十七首から第百三十四首までは、五月五日の端午の節句に軒に葺いたり、根の長さを競ったりしたあやめ草の歌が続く。
 作者の「永縁」は藤原永相の子で、興福寺の僧である。権僧正に至り、ほととぎすの歌によって初音の僧正と呼ばれた。

 初句「あやめ草」は呼びかけの対象で、端午の節句のあやめ草である。
 二句「我が身の憂きを」はつらい我が身をの意で、作者自身の境遇への思いを示している。
 三句「引きかへて」は引き替えての意で、あやめ草を「引く」ことと縁語の関係にある。
 四句「なべてならぬに」は並々でない様子にの意で、ありふれていないすぐれたさまをいう。
 結句「生ひも出でなむ」の「なむ」は他にあつらえ望む終助詞で、生え出てほしいの意となる。

ひきかふ:引き替える、取り替える
おひいづ:生え出る
作者
永縁
出典
金葉和歌集
前の歌
玉江にや今日のあやめを引きつらむ 磨ける宿のつまに見ゆるは
次の歌
あやめ草淀野に生ふるものなれば ねながら人は引くにやあるらむ