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五月雨に水まさるらし沢田川
槙の継橋浮きぬばかりに

歌の意味
五月雨のために水かさが増しているらしい。沢田川では、槙の継ぎ橋が浮いてしまうほどに。
鑑賞
巻第二 夏歌 138

 五月雨のために沢田川の水かさが増し、槙の継ぎ橋が浮き上がってしまいそうだ、と詠む歌である。増水した川の勢いを、橋が浮くほどという誇張によって描いている。
 沢田川は山城の歌枕で、催馬楽の「沢田川」に、袖が濡れるほど浅い川に高い橋を渡すと歌われている。浅い川として知られる沢田川が、橋が浮くほど水かさを増したとする点に趣向がある。
 本巻の第百三十五首から第百四十首までは五月雨の歌が続き、降り続く長雨によって水かさが増し、景色が水に沈んでいくさまが詠まれていく。
 作者の「顕仲_藤原」は、藤原資仲の子の藤原顕仲である。堀河天皇の時代の歌壇で活躍した歌人である。

 初句「五月雨に」は五月雨のためにの意である。
 二句「水まさるらし」の「らし」は根拠に基づく推定の助動詞で、水かさが増しているらしいの意となる。ここで句切れとなる二句切れの歌である。前歌の第百三十七首の「水やまさるらむ」と同じく、水かさの増すことを推し量っている。
 三句「沢田川」は山城の歌枕で、催馬楽に歌われた川である。
 四句「槙の継橋」は槙の板を継ぎ渡して架けた橋である。
 結句「浮きぬばかりに」は浮いてしまうほどにの意で、二句の推定の根拠を示している。本巻の第百四十首では入り江の橋が実際に浮いたさまが詠まれ、浮きそうな本歌から浮いてしまった歌へと進んでいる。

まき:杉や檜などの良材となる木
つぎはし:板を継ぎ渡して架けた橋
作者
藤原顕仲
出典
金葉和歌集
前の歌
五月雨に玉江の水やまさるらむ 葦の下葉の隠れゆくかな
次の歌
五月雨は小田の水口手もかけで 水の心にまかせてぞ見る