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夏衣裾野の草を吹く風に
思ひもかけず鹿や鳴くらむ

歌の意味
夏の山の裾野の草を吹く風に、季節外れにも思いがけず鹿が鳴いているのだろうか。
鑑賞
巻第二 夏歌 144

 夏の裾野の草を吹く風が秋のように涼しいので、鹿も秋が来たと思って、思いがけず鳴いているのだろうか、と詠む歌である。秋の景物である鹿の声を夏の歌に取り込み、風の涼しさに季節の移ろいを感じさせている。
 初句の「夏衣」は巻頭の第九十四首の三句にも置かれている。
 作者の「顕季」は、藤原隆経の子で修理大夫に至った藤原顕季である。母が白河天皇の乳母であったことから院の近臣として重んじられた。和歌の家である六条藤家の祖である。

 初句「夏衣」は夏に着る衣で、衣の「裾」の縁から二句の「裾野」を導いている。巻頭の第九十四首の「夏衣」と同じ語である。
 二句「裾野の草を」の「裾野」は山のふもとのなだらかな野で、「裾」は初句の「衣」の縁語である。
 三句「吹く風に」は吹く風のためにの意で、涼しい風であることを示している。
 四句「思ひもかけず」は思いがけずの意で、「かく」は衣を掛ける意を響かせ、初句の「夏衣」の縁語となっている。
 結句「鹿や鳴くらむ」は係助詞「や」と現在推量の「らむ」が結び、鹿が鳴いているのだろうかと推し量っている。本巻の第百四十六首、第百四十七首にも鹿が詠まれている。

すその:山のふもとのなだらかに広がる野
作者
藤原顕季
出典
金葉和歌集
前の歌
夜もすがらはかなく叩く水鶏かな させる戸もなき柴の仮屋を
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風吹けば蓮の浮葉に玉こえて 涼しくなりぬ蜩の声