- 歌の意味
-
風が吹くと、蓮の浮き葉の上を露の玉が越えて転がり、ひぐらしの声も涼しく聞こえるようになった。
- 鑑賞
-
巻第二 夏歌 145
風が吹くと蓮の浮き葉の上を露の玉が転がり越え、ひぐらしの鳴く声も涼しく感じられるようになった、と詠む歌である。風、露の玉、蝉の声と、目と耳でとらえた景物を重ねて、夏の夕べの涼しさを描いている。
蓮の葉の上の露を玉に見立てるのは古今和歌集の僧正遍昭の歌にも見える伝統的な趣向で、本歌はそれを風に揺れて転がる動きとしてとらえている。
作者の「俊頼」は、源経信の子の源俊頼である。白河院の命により本集金葉和歌集を撰んだ。革新的な歌風で知られる。
初句「風吹けば」は風が吹くとの意で、已然形に「ば」が付いた確定条件である。
二句「蓮の浮葉に」の「浮葉」は水面に浮かんでいる葉である。
三句「玉こえて」の「玉」は葉の上の露を玉に見立てた語で、風に揺られて露の玉が葉の上を越えて転がるさまをいう。
四句「涼しくなりぬ」は涼しくなったの意で、完了の「ぬ」で句切れとなる四句切れの歌である。
結句「蜩の声」は体言止めで、涼しさを感じさせる景物を最後に示している。四句と倒置の関係にあり、ひぐらしの声も涼しくなったと読める。
うきは:水面に浮かんでいる葉
たま:葉の上の露を玉に見立てた語
ひぐらし:カナカナと鳴く蝉
- 作者
-
源俊頼
- 出典
-
金葉和歌集
- 前の歌
-
夏衣裾野の草を吹く風に 思ひもかけず鹿や鳴くらむ
- 次の歌
-
沢水に火串の影の映れるを 二ともしとや鹿は見るらむ