七夕の苔の衣をいとはずは
人なみなみに貸しもしてまし
- 歌の意味
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織女が私の粗末な苔の衣を嫌がらないのならば、人並みに貸しもするのだが。
- 鑑賞
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巻第三 秋歌 159
七夕には織女に衣を貸す風習があるが、僧である自分の衣は苔の衣と呼ばれる粗末なものなので、織女が嫌がらないのなら人並みに貸しもしようものを、と詠む歌である。出家の身をへりくだりながら、七夕の風習に加わりたい心をおかしみを込めて表している。
七夕に織女へ衣を供える風習を踏まえ、本巻の第百六十首、第百六十三首も衣を貸すことを詠んでいる。
本巻の第百五十八首から第百六十七首までは七夕の歌が続き、年に一度の牽牛と織女の逢瀬、織女に衣を貸す風習、明け方の別れの涙などが詠まれていく。
作者の「能因」は、俗名を橘永愷という平安時代中期の僧である。諸国を旅して多くの歌を残した。中古三十六歌仙の一人で、小倉百人一首にも歌が入っている。
初句「七夕の」はここでは織女を指している。
二句「苔の衣を」の「苔の衣」は僧や隠者の着る粗末な衣で、出家の身である作者自身の衣をいう。
三句「いとはずは」は嫌がらないならばの意で、「ずは」は打消の仮定を表し、結句の「まし」と呼応している。
四句「人なみなみに」は世の人と同じようにの意で、七夕に衣を貸す風習に人並みに加わることをいう。
結句「貸しもしてまし」の「まし」は反実仮想の助動詞で、貸しもするのだがの意となる。実際には貸すのをためらう心を含んでいる。
こけのころも:僧や隠者の着る粗末な衣
いとふ:嫌がる
- 作者
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能因
- 出典
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金葉和歌集
- 前の歌
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万代に君ぞ見るべき七夕の 行き合ひの空を雲の上にて
- 次の歌
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藤衣忌みもやすると七夕に 貸さぬにつけて濡るる袖かな