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帰るさは浅瀬も知らじ天の川
飽かぬ涙に水しまさらば

歌の意味
帰り道には浅瀬もわからないだろう。天の川が、別れを惜しむ涙で水かさを増したならば。
鑑賞
巻第三 秋歌 167

 別れを惜しむ二星の涙で天の川の水かさが増したなら、帰り道には渡るための浅瀬もわからなくなるだろう、と詠む歌である。涙の多さを誇張して、別れの悲しみの深さを表している。
 前歌の第百六十六首が波をかけて帰りを遅らせたいと願ったのに対し、本歌は涙そのものが川の水かさを増して帰り道を閉ざすと詠み、二首は天の川の帰り道をめぐって対をなしている。これで七夕の一連が終わる。
 本巻の第百五十八首から第百六十七首までは七夕の歌が続き、年に一度の牽牛と織女の逢瀬、織女に衣を貸す風習、明け方の別れの涙などが詠まれていく。

 初句「帰るさは」の「帰るさ」は帰り道、帰る時の意である。本巻の第百六十二首、第百六十六首の「帰さ」と同じく、別れの帰り道を詠んでいる。
 二句「浅瀬も知らじ」は浅瀬もわからないだろうの意で、「じ」は打消推量の助動詞である。ここで句切れとなる二句切れの歌で、下の句は倒置となっている。
 三句「天の川」は牽牛が渡って帰る川である。
 四句「飽かぬ涙に」は別れを惜しむ涙での意で、本巻の第百六十五首の「飽かぬ別れの涙」と通じている。
 結句「水しまさらば」の「し」は強意の副助詞で、水かさが増したならばの意となる。

かへるさ:帰り道、帰るとき
あさせ:川の浅い所。渡り場となる
出典
金葉和歌集
前の歌
天の川帰さの舟に波かけよ 乗りわづらはば程も経ばかり
次の歌
咲き初むるあしたの原の女郎花 秋を知らするつまにぞありける