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おのづから秋は来にけり山里の
葛はひかかる槙の伏屋に

歌の意味
おのずと秋はやって来たことだ。山里の、葛が這いかかっている槙の伏屋に。
鑑賞
巻第三 秋歌 170

 誰も訪れない山里の、葛が這いかかった粗末な槙の小屋にも、自然と秋はやって来た、と詠む歌である。人の訪れはなくても季節は確かに訪れるという、山里の秋の静けさと寂しさを描いている。
 本巻の第百七十二首も山深い家に秋が来たと詠み、二句の「秋は来にけり」と同じ語が用いられている。
 本巻の第百六十八首から第百七十三首までは、女郎花や稲葉を吹く風、山里の景などによって秋の訪れを知る歌が続く。
 作者の「経信」は、源道方の子で大納言に至った源経信である。桂大納言と呼ばれた。晩年は大宰権帥として任地で没した。撰者源俊頼の父である。

 初句「おのづから」は自然に、ひとりでにの意で、人が知らせなくても秋が訪れることを示している。
 二句「秋は来にけり」は秋はやって来たことだの意で、完了の「ぬ」と詠嘆の「けり」で今気づいた感慨を表す。ここで句切れとなる二句切れの歌で、下の句は倒置となっている。本巻の第百七十二首の結句と同じ句である。
 三句「山里の」は人里離れた山あいの里である。
 四句「葛はひかかる」は葛のつるが這いかかっているの意で、秋の野の植物によって荒れた住まいを思わせる。
 結句「槙の伏屋に」の「伏屋」は屋根の低い粗末な小屋で、「槙」はその材をいう。

おのづから:自然に、ひとりでに
ふせや:屋根の低い粗末な小屋
まき:杉や檜などの良材となる木
作者
源経信
出典
金葉和歌集
前の歌
咲きにけりくちなし色の女郎花 言はねどしるし秋の気色は
次の歌
稲葉吹く風の音せぬ宿ならば 何につけてか秋を知らまし