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夕されば門田の稲葉おとづれて
葦のまろやに秋風ぞ吹く

歌の意味
夕方になると、門前の田の稲葉をそよそよと音を立てて訪れ、葦葺きの粗末な小屋に秋風が吹いてくることだ。
鑑賞
巻第三 秋歌 173

 夕方になると、門前の田の稲葉にそよそよと音を立てて秋風が訪れ、葦で葺いた粗末な小屋にも吹き込んでくる、と詠む歌である。稲葉のそよぐ音と小屋に吹く風によって、田園の秋の夕暮の寂しさとさわやかさを描いている。
 小倉百人一首に採られた作者の代表歌で、田園の景を清新に詠んだ歌として名高い。前々歌の第百七十一首と同じく、稲葉を吹く風によって秋を感じ取っている。この歌で秋の訪れを知る一連が終わり、次歌から月の歌が続いていく。
 本巻の第百六十八首から第百七十三首までは、女郎花や稲葉を吹く風、山里の景などによって秋の訪れを知る歌が続く。
 作者の「経信」は、源道方の子で大納言に至った源経信である。桂大納言と呼ばれた。晩年は大宰権帥として任地で没した。撰者源俊頼の父である。

 初句「夕されば」は夕方になるとの意で、「さる」はその時が来る意である。
 二句「門田の稲葉」の「門田」は家の門の前にある田で、本巻の第二百十五首にも「門田の稲」が詠まれている。
 三句「おとづれて」の「おとづる」は、音を立てる意と訪れる意とを掛けたもので、稲葉が音を立てることと秋風が訪れることとを重ねている。
 四句「葦のまろやに」の「まろや」は葦などで屋根を葺いた粗末な小屋である。
 結句「秋風ぞ吹く」は係助詞「ぞ」を受けて連体形「吹く」で結ぶ係り結びで、秋風の吹くさまを強調している。

ゆふさる:夕方になる
かどた:家の門の前にある田
おとづる:音を立てる意と、訪れる意を掛ける
まろや:葦などで屋根を葺いた粗末な小屋
作者
源経信
出典
金葉和歌集
前の歌
山深み訪ふ人もなき宿なれど 外面の小田に秋は来にけり
次の歌
山の端に飽かで入りぬる夕月夜 いつ有明にならむとすらむ